プロジェクト中断や未払い対応も経験済みのイラストレーター、さらえみ(@saraemiii)です。
VTuberとして活動するにあたって、よく聞く『著作権』は意識していても「他の法律は知らない・・・!」となっていませんか?
他のクリエイターへの発注や関係者との取引で、自身が守られたり・こっちが守らなければいけない法律がいくつかあります。
この記事では、依頼者(VTuberやクライアント)視点で知っておいたほうが良い法律を紹介します。

VTuberに関連しそうな内容だけをピックアップしています。
条件や違反報告方法などの細かい内容は、公式リンクをご参照ください。
私もなんとなく知っていた程度でしたが、今回改めて調べ直す事で理解度がグッと上がりました。
①発注・受注に関連する『フリーランス新法』
最近できた働き方の多様化に対応した法律で、フリーランスが不当に使い潰されないようにと制定されています。
- 依頼内容の書面化
- 報酬の60日以内支払い
- 不当な契約変更は禁止
企業や個人事業主が依頼した際に適用され、一般個人の方には適用されません。
実際に大手企業が勧告を受けたニュースもあります。



金額面もありますが、新法が適用されない背景もあって、一般個人の方がプロに趣味用に制作依頼するのは割と難しいです。
趣味用も受付しているクリエイターやスキルマーケットを活用すると良いかもしれません。


②発注・受注に関連する『下請法』
法人企業との取引で、立場が弱くなりがちな下請事業者を保護する法律です。



企業が発注する場合やVTuberが企業案件を受けた場合にも注視しておきたいですね。
- 報酬の60日以内支払い義務
- 明らかに低価格を強要する買いたたき禁止
- 不当な再修正・返品禁止
- 不当な報酬減額禁止
『法人企業 → 個人事業主・小規模事業者』といった取引形式に適用されるので、『個人VTuber → 個人クリエイター』では下請法は適用範囲外になります。



個人事業同士の場合は、上記のフリーランス新法でカバーしましょう。
③VTuberや視聴者の情報を守る『個人情報保護法』
その名の通り個人情報を保護する法律で、二次元の姿が当たり前のVTuberにも関わってきます。
生存する個人に関する情報
- 氏名・住所・電話番号・メールアドレス
- マイナンバー・免許証番号・パスポート番号
- 顔や声が特定できる、画像・映像・音声
- 個人を特定できる、IPアドレス・Cookie情報
個人情報を保護するために、事業者は以下のような事を徹底しなければいけません。
- 個人情報を集める際に利用目的を明確する
- 集めた目的以外に個人情報を使うのは不可
- 本人の同意なしに第三者へ提供できない
- 漏洩・紛失・改ざんを防ぐ管理体制を整える義務
- 本人からの開示・削除請求に応じること



例えば、収益化してるVTuberは『事業者』にあたるので、ノベルティの発送に使う住所氏名など、視聴者の情報は慎重に扱う必要があります。
VTuber自身も、仕事そのものに直結する個人情報の漏洩を取引先から防ぐ事ができます。
個人でも情報侵害はNG!となる法律まとめ
『個人情報保護法』は事業者から保護される形です。
- 個人情報を晒して社会的評価を下げる:名誉毀損罪・侮辱罪
- 住所や電話を晒した結果嫌がらせが発生:信用毀損罪・業務妨害罪
- 個人情報を「晒すぞ」と脅した場合:脅迫罪・強要罪
- 個人情報を無断公開された:プライバシー権(人格権)
- 個人情報を使って付きまとい行為をされた:ストーカー規制法
- SNSでの個人情報を晒された:迷惑防止条例(都道府県ごと)
- 他人のIDやパスワードを使って個人情報を取得:不正アクセス禁止法



普通に考えてモラル的にNGな出来事は何かしらの法に抵触しそうです。
問題が発生してどの法律が適用するのかわからない場合には弁護士などの専門家を頼りましょう。
④有名作品の模倣やラフ案の流用を防ぐ『不正競争防止法』
模倣や誤解を招く行為を防いで、公正な競争秩序を守るための法律になっています。
例えば、以下のような行為が違反事例になります。
- 有名VTuberの名前やロゴを真似て視聴者に誤解を与える
- 依頼したラフ案やアイデアを別のクリエイターに発注流用
- 依頼制作したデザインを他者にもそのまま販売する
今のところVTuberで事件例は無さそうですが、知名度やブランドを利用されるくらいの文化形成になりつつあるので気をつけた方が良いかと思います。



VTuberではない制作クリエイター側も注意したほうが良い法律ですね。
知名度のある有名なものや秘密性の高いものが対象になります。
『ラフ案やアイデアの流用』はクリエイティブに詳しくない発注者はうっかりやってしまいそう。
⑤登録されたブランドを守る『商標法』
VTuber名やロゴなどを第三者に不当に使われないよう守るには、商標登録が必要です。
- 第三者に先に商標登録されないよう注意が必要
- デザインを登録する場合は著作者の同意が必要
- 商標登録には膨大な費用と審査の時間がかかる
知名度が上がっていくとその価値を使って勝手に商売をしようとする悪い人間も出てきます。
著作権 | 商標法 | 不正競争防止法 | |
---|---|---|---|
権利発生条件 | 作品が出来たら無料で自動発生 | 有料の登録申請が必要 | 周知性と秘密性があれば自動発生 |
守る対象 | 人が制作した『創作物』 | 商品やサービスの『ブランド』 | ブランド表示/ラフ等の秘密管理 |
保護期間 | 作者の死後70年まで | 登録から10年ごとに更新が必要 | 条件を満たす限り永久 |
違反の判断 | 親告罪:権利者の判断次第 (商業規模の侵害は非親告罪) | 非親告罪:消費者に混乱を与えたか等 | 非親告罪:消費者に誤解を与えたか等 |
VTuberにまつわる著作権に関してはこちらにまとめています


トラブルを防ぐには・・・事前に契約書・書面で残しておく
実際、私達も含めて法律すべてを把握し尽くしてる人や企業は稀かと思います。
ベストなのは契約書ですが、難しい場合でもメールやチャットログ等で残しておくとリスクヘッジになります。
最近はオンラインで契約できる便利ツールも増えています。
スマホでも簡単にできる契約書メーカー


文化庁の契約書作成支援システム
オンラインでサイン・捺印・管理ができるサービス


トラブルが解決しなければ専門家に相談を
気軽に相談できる窓口のある法律もありますが、素人では立証が難しい・告発前に簡単な解決策を見つけたいといった場合に、弁護士など専門家に相談する手段があります。



私も長くフリーランスしていて遭遇した、未払いなどのトラブルで相談した結果、段階的な対応策を教えてもらえました。
違法を訴える前にやれることも結構あります。
新しいVTuber文化に適応できない弁護士もいますが、最近ではVTuberに詳しい弁護士も増えてきています。
VTuber専門サービスが増加中


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VTuberは守る側にも守られる側にもなる
VTuberに関連しそうな、著作権以外の法律を紹介しました。
この情報が、円滑に楽しく活動するための支えになればと思います。