キャラクターデザインを作る手順とコツ【役割から設計まで実例で解説】

キャラデザの仕事もいくつかしてきた、イラストレーターさらえみ(@saraemiii)です。

オリジナルキャラクターを作るのは楽しいけれど、いざ作ってみると何か足りなくて魅力的に見えない事も…

キャラクターデザインはイラストとはまた違った考える要素がいくつかあります。

仕事で経験して学んできたキャラクターデザインの方法についてまとめてみました。

記事の後半では、実際にキャラクターデザインのコツに沿ってキャラクターを作成してみています。

さらえみ

キャラクターデザインの時に考えることを勉強がてら改めてまとめてみました。

調べるだけでなく、やはり実際にデザインを描いてみると結構勉強になりますよ。

もくじ

キャラクターデザインとイラストの違い

改めて知るために、Wikipediaから意味を抜粋してみました。

図像によって物語、小説、詩などを描写もしくは装飾し、また科学・報道などの文字情報を補助する、形式よりも題材に主眼を置いた図形的もしくは絵画的な視覚化表現である。

Wikipedia「イラストレーション」より

小説、漫画、映画、アニメ、コンピュータゲーム、 広告などのフィクションに登場する人物や動物など、あるいはそれら登場人物の性格や性質のこと。また、その特徴を通じて、読者、視聴者、消費者に一定のイメージを与え、かつ、商品や企業などに対する誘引効果を高めるものの総体。

Wikipedia「キャラクター」より

キャラクターもイラストもどちらも絵で表現するものなので同じものと思われがちですが、違うものです。

物事を描画で表現するのがイラスト、キャラクターは絵に限らず見ている人が一定の共通のイメージを持つ人物や動物などの性格の事を指しています。

架空のキャラクターを性格やビジュアルなど様々な角度から作り出すのが「キャラクターデザイン」です。

キャラクターの4つの役割

①世界観や物語を表現する

小説や漫画が一番わかりやすいです。キャラクターが出会ったり活動するとドラマが生まれ、どういう土地で価値観のある場に居るのかもわかります。

小説や漫画じゃなくても、看板娘的なキャラクターが1人居るだけでも、表情や服装など見た目で表現したい時代や文化がひと目でわかります。

②注目を集める

リアルな人間や動物よりデフォルメされたり、シンプルなビジュアルや、なんらかの特徴的な形状をしているので、どんなキャラクターでも割と人目につきやすいです。

有名なキャラクターは注目されて当然ですが、そんなに有名でなくともキャラクターを活用するのは少しでも注目されやすいからではないでしょうか。

③人々に感情を与える

キャラクターがポジティブだと明るく楽しい気持ちに、とんでもない悪役だと憎らしく、身近な印象なら共感でき親しみやすさを感じます。

かわいいキャラクターを長く愛する事や、漫画やドラマだと悪役でもその背景までわかると憎しみと共感が交ざる事もありますよね。

人間や動物同様に複雑に設計される事もありますが、キャラクターはリアルよりシンプルに人々に感情を起こしやすいと思います。

④ブランドを伝える

世界観を表し、注目を集め、人々に感情を与えるキャラクターは、総合すると所属するもののブランドを伝える役目になります。

どんな物語の主人公か、どんな会社の看板か、商品のイメージなど。

キャラクターを見るだけで全てを伝えるのは難しいですが、代表的なイメージを第一印象として伝える事ができます。

キャラクターを作る3つの手段

キャラクターデザインをする手段は、主にこんなパターンかと思います。

1:自分で全部デザインしちゃう

絵が描けてデザインできる人は全部やってしまう方もいます。漫画家さんは大半このケースですよね。

キャラクターは上手く描けなくても成り立ちます。

ヘタウマというジャンルもありますが、下手でも味が出て可愛がられるケースもたくさんあります。画力の必要性はキャラクターを扱う企画の方向性によると思います。

小説や漫画、企業向けなどになると、違和感の無い惹き込まれる作画力が求められます。

さらえみ

例えばLINEスタンプのキャラクターは本当に自由ですよね。味のあるデザインが好きでついつい購入してしまいます。

多くの人に見られる広告用となると、ある程度作画力が無いと違和感が残り、本来伝えたいキャラクターそのものとは違った部分に注目されてしまいます。

用途にあわせて自分で全てやるかどうか判断する事をオススメします。

2:性格やイメージを伝えて作ってもらう

描ける人に依頼する場合はこのパターンが多いと思います。

ある程度の設定は用意して作画は他の人に頼む場合と、簡単なラフだけ作図して依頼し綺麗に仕上げてもらう場合もあります。

下記にデザインする流れを記載しているのですが、キャラクターをデザインするのは結構大変な仕事になります。

他の人に頼む場合は、プロでもプロとして活動していない人でも、労力がかかる事を大前提に依頼してください。

さらえみ

不特定多数のクリエイターに描いてもらえる、コンペに出す場合もありますね。
たくさんのデザインから選出できるメリットと、コンペの性質上、詳細を詰めにくいデメリットがあります。

3:企画や役割だけ伝えて性格から作ってもらう

作画デザインだけでなくキャラクターの内面まで作画する人と一緒に作り上げていく、仕事として大変だけどやりがいのあるケース。

作って貰う人と、どのように相談しどこまで作り上げていくのか確認して進めていかないと、関係者同士で「違う性格をイメージしていた」といったトラブルにもなりかねません。

さらえみ

キャラクターはデザイン出来て完了ではないので、イメージとズレた完成になるとその後の展開にも影響が出るかも。
信頼できる方とじっくり作るのをオススメします。

キャラクターと権利について

厳密に言うと、キャラクターそのものには著作権は無い

キャラクターはその性格や見た目の形を指すので、著作権はありません。

著作権は創作物に発生するため、キャラクターを描いたイラストや小説・漫画に著作権がかかります。

ならば、同キャラクターを使って何してもOKというワケはなく、また別の権利で守られています。

さらえみ

とはいえ、大概のキャラクターは何かしら創作物で表現されているので、パクったりすると著作権的にも引っかかるはずです。

キャラクターを守るのは商標登録

有名なキャラクター達は、主に商標登録で守られています。

あきらかに似せたキャラを作ったり、無断で使用したりすると、権利者から使用停止や使用料を要求をされたり、悪質で儲けに走っているなど場合によっては損害賠償となることもあります。

キャラクターの権利を『IP』と呼ばれているのも広く知られるようになりました。

『IP』はこの商標権や著作権などを含めた、キャラクターにまつわる知的財産をまとめて呼ぶ時に使われています。

さらえみ

数十年前は有名キャラを勝手に使用しているグッズや看板を見かけることもありましたが、今やネットですぐに見つかる時代です。

ただの絵だと考えず、キャラにも絵にも権利があることを知っておきましょう。

同人やファンアートにはガイドラインの制定が増加傾向

本来、権利的にはグレーゾーンで大目に見られていたのが同人誌やファンアートです。

現在では、相乗効果でヒットの要因にもクリエイティブの発展にも繋がるため、公式が二次創作のガイドラインを制定するケースが増えてきました。

ファン個人も著作権意識が高くなりつつあり、ガイドラインがある作品は積極的に二次創作されて発展し、二次創作NGの作品は慎重になりファンブームが起こりにくい場合もあります。

さらえみ

二次創作も良い面・悪い面があると思います。

ファンの二次創作が作品を知るきっかけになり良い効果を生んでいる事が多い反面、これまでの同人の歴史上で大きな問題になった事件もいくつかあるので興味がある人は調べて知っておくと良いかもしれません。

キャラクターデザインを制作する工程

仕事などでキャラクターデザインをする際の大まかな流れです。

1:企画・イメージなどの情報を把握する

ここで情報を取りこぼすと全然違うキャラクターが出来てしまいます。

  • どんな人向け?
  • どこに使われる?
  • キャラクターを通して伝えたい事

…といった、企画の趣旨をしっかり把握します。

どんな人達に見てほしいキャラクターか

  • ファミリー向け → 誰からも愛されるかわいいデザイン
  • 男性の注目を集める → あざといくらいの女の子
  • 学生の共感を集める → 学生キャラクター
  • 女性を癒やしたい → イケメンキャラクター

といった具合に、見てほしい人によってもキャラクターイメージが変わります。

さらえみ

あえて見た目は狙わずに、喋り方や性格でターゲットに寄り添う場合もあります。

企画の目的や内容から、注目を集めたい人(ターゲット)を考えると決めやすくなります。

2:資料集め・イメージラフで輪郭形成

キャラクターデザインのヒントとなる資料を集めます。

  • モデル
  • モチーフ
  • 連想されるもの
  • イメージカラー
  • 性格
  • 髪型
  • 服装
  • 持ち物
  • ペット

この段階で全部決めきる必要はありませんが、必ず含めたいものがあるなら認識を統一しておきたいです。

そのディティールや組み合わせたらどんな感じになるか…など大まかなイメージラフを描く事もあります。

資料は企画を取り仕切る方・クライアントからいただく事もあり、その上でも自分でWEB検索・SNS検索・本などで調べていきます。

さらえみ

特にハッキリしたモデル・モチーフがある場合、間違いの無いよう進めたいので、本で調べて確認するか、クライアントから詳しい情報をいただくようにしています。

例えば以下のような設定は、キャラクターデザインにも大きく影響があります。

舞台や時代設定

キャラクターが活動する、国・場所・時代・環境を考えていきます。

海外・時代劇・学生などなど、髪型や着ている衣装は、この舞台や時代設定に左右されやすいです。

年齢・性格、キャラのパーソナル部分

年齢・性格・身長・体重・趣味・種族などなど、キャラクターのパーソナルな設定は、体型や表情、身につけるモチーフなどに大きく影響する大事な部分です。

他のキャラクターも存在する場合は、どういった違いがあるのかも考えます。

相関など、キャラを取り巻く構成

他のキャラクターが存在する場合は、友達なのかライバルなのか、お互いがどういった関係性なのかも重要な設定です。

看板キャラクターなど、他のキャラクターがいない場合でも大まかな友人・家族・関係者構成がわかると普段の生活が見え、キャラクターデザインのヒントにもなります。

3:ラフデザイン作成

ここまでの資料を元にラフデザインを作成します。

クライアントに見てもらい、これでどうか相談する物になるので、誰が見てもある程度物がわかるように書き込んだラフにします。修正やパターンを出す事もあります。

さらえみ

イラストにも共通することですが、清書に行くと修正が難しい場合がほとんどなので、修正が重なってもここで詰めていくのが重要だと思っています。

4:清書

デザイン内容をラフで詰めたら清書をします。

清書は納品物により、ポーズ絵だったり設定画だったりします。

5:デザインを元にポーズ絵など必要な素材の制作へ

キャラクターデザインはデザインが出来たら完了ではありません。

ポーズをつけた絵で完了する場合もありますし、企画内容によって複数枚絵が必要だったり、多くの展開予定があり出来たキャラクターを他のクリエイターにも描いてもらう予定がある場合には設定画や表情集が必要だったりします。

実際にキャラクターをデザインしてみる

ここでは試しに「女性の先生キャラクター」でデザインしてみます。

イメージ・特徴を考える

情報設計から特徴を洗い出します。

しっかりしていて可愛げのある女性の先生を目指してデザインしてみたいと思います。

  • わかりやすく誰が見ても先生
  • 親しみやすい可愛げも
  • 体育会系よりも文化系
  • 女性に慕われる
  • 独身・若い

キャラクターデザインでこれらの情報全部を伝えるには無理があります。

ですが、細かい情報もデザインの取っ掛かりになります。

さらえみ

キャラクターの細かいデータは、デザインのヒントになるほか、キャラクターが出来た後の、漫画・動画・グッズなどの展開にも役に立ちます。

相反する要素を含めたいなら割合で考える

先生としてキッチリした印象持ちつつ可愛げもある…というような相反する要素が含まれる場合、割合を考えるとイメージしやすくなると思います。

  • 先生としてキッチリ…70%
  • 可愛げ…30%

この特徴を元に他の要素を考えてデザインを進めていきます。

さらえみ

例えば同じセクシー代表キャラクターでも「峰不二子」と「ドロンジョ」では印象が全然違います。言語化や割合を示すと何処が違うのかが分析できます。

年齢

現代の先生なので、見た目大人の女性20~30代のイメージで等身高めに描いてみます。

同じデザインでも等身で印象が結構変わります
さらえみ

漫画やファンタジーなどもっと特徴的なキャラクターなら、子供に見える先生でもアリですよね。

髪型

先生としてキッチリしているので無造作ヘアではなさそうですね。

文化系なのでスポーティな髪型も微妙かもしれません。

ヘアカタログなどを参考に、写真のように毛先を一本一本表現すると濃いタッチになるので、省略するポイントも考えていきます。

髪型は顔の大部分を占めるので、大きく見た目が左右されます

顔のパーツ

今回デザインするキャラでは、ほんわかしているよりはキリッとした印象が強そうです。

特に目はよく見られる大事なパーツ
さらえみ

大人の女性なので目が大きくなりすぎないように気をつけます
(私はよく大きくしすぎてしまいますので…)

服装衣装・持ち物

キッチリ感を出すならスーツやブラウスが合いそうですが、女性に慕われるとなるとダサくならないようにしたいところ(難しい…)

どこにでもいる素材やテンプレート的になるのも避けたいので、若い・可愛げでオリジナル要素をプラスしてみます。

スカートやパンツスタイルだけでも様々なデザインが考えられます
さらえみ

髪型や衣装は写真などのリアルな資料も参考にしますが、2次元ならではの似合うデザインもあると思うので、他のアニメやイラストも参考にしていきます。

シルエット

塗りつぶしたシルエットでもどんなキャラクターかわかると、どんなポーズをしても遠くから見ても判別できるためとても理想的です。

今回は派手なキャラではないのでそんなに特徴的でなくても良いですが、どこにでもいるキャラから少しはプラスしたいのでシルエットを意識してこのようにアレンジ。

髪型とリボンで少しだけ特徴づけてみました
さらえみ

少年漫画の主人公や看板キャラクターはパッと目につくよう、髪型や服装をもっと特徴的にしている場合が多いですよね。

配色

キャラクターの印象に大きく関わるのが色です。これは一例ですが色の印象はこのような感じ。

明暗のバランス

色の明暗によってキャラクターを見た時の印象が変わります。

明暗の差が少ないとメリハリが無くぼんやりした印象になってしまいます。

明暗はモノクロにしてバランスを考えていきます。作画する際は、ほとんどの描画ソフトにある、モノクロにするレイヤーを挟むだけで確認できます。

さらえみ

逆に背景にいるモブキャラなど目立たせたくない人物には、わざとメリハリ無い配色にすると丁度良くなります。

比率

あらゆるデザイン同様に、配色の比率も考えます。

多くの色が同じ比率でたくさんあるとまとめるのが非常に難しく、ただ派手でゴチャゴチャしたわかりにくいキャラクターになりかねません。

基本3色程度にとどめて、メインカラー、サブカラー、アクセントカラーで考えていくとまとまりやすくなります。

今回は青色の同系色でまとめたのですが、まとめやすい反面地味にもなりやすいので、リボンの黄色をアクセントにしてみました。

同系色でまとめるにしても、青色ベースと赤色ベースでまた印象が変わります。

同じ青色ベースでも明度・彩度を変えて配色してみても、違ったイメージになります。

右側はアニメのようなより二次元的で何か物語の役割がありそうな雰囲気になりました。

あわせて読みたい
【今すぐ使える】配色の効果で映える!17個のイラスト手法 いろんなクリエイター経歴を持つイラストレーター、さらえみ(@saraemiii)です。 イラストは色の使い方で伝わる意味もずいぶん変わってきます。 「描いてみたけどパッと...

表情や仕草

ある程度デザインができると表情や仕草も考えてみると、よりキャラクターの魅力を引き出す事ができます。

キャラクターを活用するならいろんな表情が見える、イラストや漫画なども先々で展開できたほうがより注目を集められ、人気に繋がるきっかけになります。

ためしにデザインしてみたキャラクターはこちら

しっかりした感じを出しつつ可愛げもプラスされていますでしょうか?仕草で先生らしさをプラスしてみました。

アップになったときを考えて髪や服の書き込みを少し増やしています。

他のキャラクターと被らないオリジナリティを出す3つの工夫

これだけ世の中にキャラクターがあふれていると、特に人物キャラクターは見た目のデザインが他と被る可能性も高くなります。

よりオリジナリティを出したいならこのあたりを考えてみるとより良くなります。

①特徴をつける

ここまでやってきたように、モチーフやシルエットや配色など決定的な特徴をつけるとまず被ることはなくなります。

②クリエイターの味を尊重する

どんなクリエイターでも、似たような絵柄の人でも、それぞれに個性や味があります。

クリエイターの個性や味が足されたデザインなら被る可能性も少なくなります。

③設定を詳細に考える

似たような見た目でも、育ってきた環境や居場所、性格や世界観まで同じということはまずありません。

設定をしっかり考える事でキャラクター被りを防げます。

より深く愛されるキャラクターにするには…活用や展開を考える

キャラクターデザインが出来たら勝手に人気が出てくるものではありません。

どれだけデザインが魅力的でも、人に見つけられなければ人気は出ません。

その後どう活用していくかでキャラクターの人気に繋がっていきます。

キャラクターの活用例

  • LINEスタンプ
  • 商品のパッケージ
  • 案内パンフレット
  • VTuber化
  • SNSで漫画やイラストの連載
  • 漫画化
  • アニメ化
  • コスプレ
  • きぐるみ
  • オリジナルグッズ
  • 特典

活用方法によって、キャラクターのよく見られる部分(上半身だけ、全身、デフォルメ版とか)や、イラストやWEBやパンフレットなど必要な制作物も違ってきます。

キャラクターのヒットには、様々な媒体を駆使して多くの人に知ってもらう事もとても大切になります。

さらえみ

何人かのキャラが絡んでいるような関係性が見える展開ができると、キャラクターそれぞれの特徴が際立って、魅力的な世界観が出来ていきます。

キャラクターはデザインに多くの仕掛けがあり、作った後も育てていくもの

世の中には多くのキャラクターが活躍していますが、どんなキャラクターもそこに至るまでに想いを込めた工夫や育てていった経緯があります。

楽しく育てていくためにも、理想のキャラクターを生み出したいですよね。

このまとめがヒントになって、素敵なキャラクターがたくさん生み出されると嬉しいです!

もくじ