オリジナルキャラクターを作るのは楽しいけれど、いざ作ってみると何か足りなくて魅力的に見えない事も…
キャラクターデザインはイラストとはまた違った考える要素がいくつかあります。
仕事で経験して調べてきたキャラクターデザインの方法についてまとめてみました。
記事の後半では、実際にキャラクターデザインのコツに沿ってキャラクターを作成してみています。
私もキャラクターデザインの仕事をもっとできるようになりたいので、勉強がてら改めてまとめてみて、実際に考えながらデザインもやってみました!
調べるだけでなく、やはり実際にやってみると結構勉強になりますよ。
キャラクターデザインとイラストの違い
改めて知るために、Wikipediaから意味を抜粋してみました。
図像によって物語、小説、詩などを描写もしくは装飾し、また科学・報道などの文字情報を補助する、形式よりも題材に主眼を置いた図形的もしくは絵画的な視覚化表現である。
小説、漫画、映画、アニメ、コンピュータゲーム、 広告などのフィクションに登場する人物や動物など、あるいはそれら登場人物の性格や性質のこと。また、その特徴を通じて、読者、視聴者、消費者に一定のイメージを与え、かつ、商品や企業などに対する誘引効果を高めるものの総体。
どちらも絵で表現するものなので同じものと思われがちですが、違うものです。
物事を描画で表現するのがイラスト、キャラクターは絵に限らず見ている人が一定の共通のイメージを持つ人物や動物などの性格の事を指しています。
架空のキャラクターを性格やビジュアルなど様々な角度から作り出すのが「キャラクターデザイン」です。
私は、そんなキャラクターが魅力的に見えたり、日々を過ごす姿を描くのが好きで、キャラクターイラストをメインに活動しています。
キャラクターの役割
世界観や物語を表現する
小説や漫画が一番わかりやすいです。キャラクターが出会ったり活動するとドラマが生まれ、どういう土地で価値観のある場に居るのかもわかります。
小説や漫画じゃなくても、看板娘的なキャラクターが1人居るだけでも、表情や服装など見た目で表現したい時代や文化がひと目でわかります。
注目を集める
リアルな人間や動物よりデフォルメされたり、シンプルなビジュアルや、なんらかの特徴的な形状をしているので、どんなキャラクターでも割と人目につきやすいです。
有名なキャラクターは注目されて当然ですが、そんなに有名でなくともキャラクターを活用するのは少しでも注目されやすいからではないでしょうか。
人々に感情を与える
キャラクターがポジティブだと明るく楽しい気持ちに、とんでもない悪役だと憎らしく、身近な印象なら共感でき親しみやすさを感じます。
かわいいキャラクターを長く愛する事や、漫画やドラマだと悪役でもその背景までわかると憎しみと共感が交ざる事もありますよね。
人間や動物同様に複雑に設計される事もありますが、キャラクターはリアルよりシンプルに人々に感情を起こしやすいと思います。
ブランドを伝える
世界観を表し、注目を集め、人々に感情を与えるキャラクターは、総合すると所属するもののブランドを伝える役目になります。
どんな物語の主人公か、どんな会社の看板か、商品のイメージなど。
キャラクターを見るだけで全てを伝えるのは難しいですが、代表的なイメージを第一印象として伝える事ができます。
キャラクターを作る手段
キャラクターデザインをする手段は、主にこんなパターンかと思います。
自分で全部デザインしちゃう
絵が描けてデザインできる人は全部やってしまう方もいます。漫画家さんは大半このケースですよね。
キャラクターは別に上手く描けなくても成り立ちます。ヘタウマというジャンルもありますが、味が出て可愛がられるケースもたくさんあります。
絵の上手い下手はキャラクターを扱う企画の趣旨によると思います。小説や漫画、企業向けなどになると、違和感の無い惹き込まれる作画力が求められます。
例えばLINEスタンプのキャラクターは本当に自由ですよね。味のあるデザインが好きでついつい購入してしまいます。
多くの人に見られる広告用となると、ある程度作画力が無いと違和感が残り、本来伝えたいキャラクターそのものとは違った部分に注目されてしまいます。
用途にあわせて自分で全てやるかどうか判断する事をオススメします。
性格やイメージを伝えて作ってもらう
描ける人に頼む場合はこのパターンが多いと思います。
ある程度の設定は用意してあり作画は他の人に頼むケース。簡単なラフだけ作図して依頼し、綺麗に仕上げてもらうケースもあります。
下記にデザインする流れを記載しているのですが、キャラクターをデザインするのは結構大変な仕事になります。
他の人に頼む場合は、プロでもプロとして活動していない人でも、報酬やお礼を送るのを大前提に依頼してください。
不特定多数のクリエイターに描いてもらえる、コンペに出す場合もありますね。たくさんのデザインから選出できるメリットと、コンペの性質上詳細を詰めにくいデメリットがあると思います。
企画や役割だけ伝えて性格から作ってもらう
作画デザインだけでなくキャラクターの内面まで一緒に作り上げていく、仕事として大変だけどやりがいのあるケース。
作って貰う人と、どのように相談しどこまで作り上げていくのか確認して進めていかないと、関係者同士で「違う性格をイメージしていた」といったトラブルにもなりかねません。
キャラクターはデザイン出来て完了ではないので、イメージとズレた完成になるとその後の展開にも影響が出るかも。
信頼できる方とじっくり作るのをオススメします。
キャラクターの権利
キャラクターに著作権は無い
キャラクターはその性格や見た目の形を指すので、著作権はありません。
著作権は創作物にあたるため、キャラクターを描いたイラストや小説・漫画に著作権がかかります。
ならば同キャラクターを使って何してもOKかというとそんなワケはありません。
キャラクターを守るのは商標登録
有名なキャラクター達は主に商標登録で守られています。
あきらかに似せたキャラを作ったり、無断で使用したりすると、権利者から使用停止要求をされたり、悪質で儲けに走っているなど場合によっては損害賠償となることも充分あります。
商標ありなし関係なく、昔と違ってこのインターネット社会では、パクるといったモラルに欠ける行動はすぐにバレて信頼を損なうリスクがあります。
同人やファンアートは今のところグレーゾーン扱い
マーケットが大きくなり、作品の魅力を広めて人気UPに貢献しているという点もあり、大目に見られているのが同人誌やファンアートです。
本来は、公式に差し止められても法律的にはおかしくありません。キャラクター自信に著作権は無いため、既存の著作物と類似しているかの証明が難しいという点も大目に見られている要素と考えられます。
個人的には同人から公式を知る事もあり、同人文化そのものも好きです。しかし印刷費や労力以上に儲けに走るのは違うと考えています。
キャラクターデザインの流れ
仕事などでキャラクターデザインをする際の大まかな流れです。
1:企画イメージなどの情報を読み込む
ここで情報を取りこぼすと全然違うキャラクターが出来てしまいます。
どんな人向けにどういった内容でどこに使われるのか、キャラクターを通して伝えたいものなどを把握します。
2:資料集め・イメージラフ
キャラクターデザインのヒントとなる資料を集めます。
モチーフや連想されるものイメージカラーなどを見つけ、そのディティールや組み合わせたらどんな感じかなど大まかなイメージラフを描く事もあります。
資料は企画を取り仕切る方・クライアントからいただく事もあり、その上でも自分でWEB検索・SNS検索・本などで調べていきます。
特にハッキリしたモデル・モチーフがある場合、間違いの無いよう進めたいので、本で調べるか、クライアントから詳しい情報をいただくのが確実です。
3:ラフデザイン作成
それらを元にラフデザインを作成します。
クライアントに見てもらい、これでどうか相談する物になるので、誰が見てもある程度物がわかるように書き込んだラフにします。修正やパターンを出す事もあります。
イラストにも共通することですが、清書に行くと修正が難しい場合がほとんどなので、修正が重なってもここで詰めていくのが重要だと思っています。
4:清書
デザイン内容をラフで詰めたら清書をします。
清書は納品物により、ポーズ絵だったり設定画だったりします。
5:デザインを元にポーズ絵など必要な素材の制作へ
キャラクターデザインはデザインが出来たら完了ではありません。
ポーズをつけた絵で完了する場合もありますし、企画内容によって複数枚絵が必要だったり、多くの展開予定があり出来たキャラクターを他のクリエイターにも描いてもらう予定がある場合には設定画や表情集が必要だったりします。
情報設計
キャラクターの見た目作りに入る前に、情報を設計していきます。
漫画やドラマなどの大きなストーリーのキャラクターは、これよりもっと深く設定を作り込む場合があります。
舞台や時代設定
キャラクターが活動する、国・場所・時代・環境を考えていきます。
海外・時代劇・学生などなど、髪型や着ている衣装は、この舞台や時代設定に左右されやすいです。
年齢・性格、キャラのパーソナル部分
年齢・性格・身長・体重・趣味・種族などなど、キャラクターのパーソナルな設定は、体型や表情、身につけるモチーフなどに大きく影響する大事な部分です。
他のキャラクターも存在する場合は、どういった違いがあるのかも考えます。
相関など、キャラを取り巻く構成
他のキャラクターが存在する場合は、友達なのかライバルなのか、お互いがどういった関係性なのかも重要な設定です。
看板キャラクターなど、他のキャラクターがいない場合でも大まかな友人・家族・関係者構成がわかると普段の生活が見え、キャラクターデザインのヒントにもなります。
どんな人達に見てほしいキャラクターか
ファミリー向けには誰からも愛されるかわいいデザイン、男性の注目を集めるならあざといくらいの女の子、学生の共感を集めたいから学生キャラクター、女性を癒やすイケメンキャラクターなどなど、見てほしい人によってもキャラクターイメージが変わります。
企画の目的や内容から、注目を集めたい人(ターゲット)を考えることができます。
難しくてアイデアが詰まる時は、実際の人物やキャラクターをモデルに考えてみると、案が出やすくなりますよ。
私はオタクなので色んなキャラから「この特徴が魅力的」と思う癖があるので、それを組み合わせて取っ掛かりにすることもあります。
外見設計【ためしにデザインしてみた】
ここでは試しに「女性の先生キャラクター」でデザインしてみます。
特徴を洗い出す
情報設計から特徴を洗い出します。
しっかりしていて可愛げのある女性の先生を目指してデザインしてみたいと思います。
- わかりやすく誰が見ても先生【第一印象】
- 親しみやすい可愛げも
- 体育会系よりも文化系
- 男性ウケよりも女性に慕われる
- 独身・若い
キャラクターデザインで全ての情報全部を見せるのは無理があります。全ての情報を見せるには、イラストや漫画などの物語を見せるチカラが必要です。
キャラクターデザインで真っ先に見せたい印象を【第一印象】として印をつけてみました。他の表現が薄くてもこれが守られていれば充分です。
デザインを考える要素として第一印象以外の情報も必要なんですが、全部を無理矢理表現しようとするとまとまらずにゴチャゴチャしたデザインになってしまいます。これでは伝えたかったものも伝わりません。
先生としてキッチリした印象持ちつつ可愛げもある…というような相反する要素が含まれる場合、割合を考えるとイメージしやすくなると思います。
- 先生としてキッチリ…70%
- 可愛げ…30%
この特徴を元に他の要素を考えてデザインを進めていきます。
例えば同じセクシー代表キャラクターでも「峰不二子」と「ドロンジョ」では印象が全然違います。言語化や割合を示すと何処が違うのかが分析できます。
年齢
現代の先生なので、見た目大人の女性20~30代のイメージで等身高めに描いてみます。私はデフォルメのほうが得意なので、等身高くてもかわいい印象が残りそうです。
漫画やファンタジーなどもっと特徴的なキャラクターなら、子供に見える先生でもアリですよね。
髪型
先生としてキッチリしているので無造作ヘアではなさそうですね。文化系なのでスポーティな髪型も微妙かもしれません。
ヘアカタログなどを参考に、毛先を一本一本表現すると濃いタッチになるので、毛束で省略するポイントも考えていきます。
顔のパーツ
ほんわかしているよりはキリッとした印象が強そうです。大人の女性なので目が大きくなりすぎないように気をつけます(私はよく大きくしすぎてしまいますので…)
服装衣装・持ち物
キッチリ感を出すならスーツやブラウスが合いそうですが、女性に慕われるとなるとダサくならないようにしたいところ(難しい…)
どこにでもいる素材やテンプレート的になるのも避けたいので、若い・可愛げでオリジナル要素をプラスしてみます。
髪型や衣装は写真などのリアルな資料も参考にしますが「二次元的に惹かれる」場合もあるので、多少デフォルメの効いたアニメやイラストも参考にしていきます。
シルエット
塗りつぶしたシルエットでもどんなキャラクターかわかると、どんなポーズをしても遠くから見ても判別できるためとても理想的です。
今回は派手なキャラではないのでそんなに特徴的でなくても良いですが、どこにでもいるキャラから少しはプラスしたいのでシルエットを意識してこのようにアレンジ。
少年漫画の主人公や看板キャラクターはパッと目につくよう、髪型や服装をもっと特徴的にしている場合が多いですよね。
配色
キャラクターの印象に大きく関わるのが色です。これは一例ですが色の印象はこのような感じ。
明暗のバランス
色の明暗によってキャラクターを見た時の印象が変わります。明暗の差が少ないとメリハリが無くぼんやりした印象になってしまいます。
明暗はモノクロにしてバランスを考えていきます。作画する際は、ほとんどの描画ソフトにある、モノクロにするレイヤーを挟むだけで確認できます。
逆に背景にいるモブキャラなど目立たせたくない人物には、わざとメリハリ無い配色にすると丁度良くなります。
比率
あらゆるデザイン同様に、配色の比率も考えます。多くの色が同じ比率でたくさんあるとまとめるのが非常に難しく、ただ派手でゴチャゴチャしたわかりにくいキャラクターになりかねません。
基本3色程度にとどめて、メインカラー、サブカラー、アクセントカラーで考えていくとまとまりやすくなります。
今回は青色の同系色でまとめたのですが、まとめやすい反面地味にもなりやすいので、リボンの黄色をアクセントにしてみました。
同系色でまとめるにしても、青色ベースと赤色ベースでまた印象が変わります。
同じ青色ベースでも明度・彩度を変えて配色してみても、違ったイメージになります。右側はアニメのようなより二次元的で何か物語の役割がありそうな雰囲気になりました。
迷った時は色に関する本からヒントを得られます!
表情や仕草
ある程度デザインができると表情や仕草も考えてみると、よりキャラクターの魅力を引き出す事ができます。
仕事ではポーズ絵だけで頼まれないケースもありますが、キャラクターを活用するならこんな表情が見えるイラストや漫画などを展開できたほうがより注目を集められ、人気にも繋がります。
ためしにデザインしてみたキャラクターはこちら
しっかりした感じを出しつつ可愛げもプラスされていますでしょうか?仕草で先生らしさをプラスしてみました。
アップになったときを考えて髪や服の書き込みを少し増やしています。
他のキャラクターと被らないオリジナリティを出すには
これだけ世の中にキャラクターがあふれていると、特に人物キャラクターは見た目のデザインが他と被る可能性も高くなります。
よりオリジナリティを出したいなら考えるのはこのあたりかと思います。
特徴をつける
モチーフやシルエットや配色など、決定的な特徴をつけるとまず被ることはなくなります。
デザイナー選び
どんなクリエイターでも、似たような絵柄の人でも、それぞれに個性や味があります。クリエイターの個性や味が足されたデザインなら被る可能性も少なくなります。
設定を考える
似たような見た目でも、育ってきた環境や居場所、性格や世界観まで同じということはありません。設定をしっかり考える事で、キャラクター被りを防げます。
より深く愛されるキャラクターにするには…活用や展開を考える
キャラクターデザインが出来たら勝手に人気が出てくるものではありません。その後どう活用していくかでキャラクターの人気に繋がっていきます。
キャラクターの活用例
- LINEスタンプ
- 商品のパッケージ
- 案内パンフレット
- SNSで漫画やイラストの連載
- CM化
- 漫画化
- アニメ化
- コスプレ
- きぐるみ
- オリジナルグッズ
- 特典
活用方法によって、キャラクターのよく見られる部分(上半身だけ、全身、デフォルメ版とか)や、イラストやWEBやパンフレットなど必要な制作物も違ってきます。
様々な媒体を駆使して多く魅力的に露出して、どれだけ多くの人に知ってもらうかが大事です。どれだけデザインが魅力的でも見られなければ人気は出ません。
何人かのキャラが絡んでいるようなイラスト展開ができると、キャラクターそれぞれの特徴が際立って、魅力的な世界観が出来そうですね。
まとめ:キャラクターはデザインに多くの仕掛けがあり、作った後も育てていくもの
世の中には多くのキャラクターが活躍していますが、どんなキャラクターもそこに至るまでに想いを込めた工夫や育てていった経緯があります。
楽しく育てていくためにも、理想のキャラクターを生み出したいですよね。このまとめがヒントになって、素敵なキャラクターがたくさん生み出されると嬉しいです!