アニメ業界の経験は一生忘れない!元アニメーターのイラストレーター、さらえみ(@saraemiii)です。
アニメーター経験についてお話すると結構な確率で「今も手描きなの?」「今はパソコンで作ってるんでしょ?」と聞かれます。
最近のアニメは特にキレイすぎて全部うまいことパソコンがやってくれてるんでは?と思うのもわかります。
そこで実際のアニメ制作の工程についてまとめてみました。
私がアニメーターやってたのは結構前なので、スタジオによっては新しい手法を取り入れてるところもあると思います🙏
すごく綺麗なTVアニメも手描きです
アニメのクオリティは時代と共に映画並に進化してますし、普通の人は現場を見る機会が少ないので「まさか1枚1枚描いてるなんて」と思う人も多いですが……
1枚1枚手描きです。
鉛筆で紙に描く場合とパソコンで描く場合もありますが、色が付く前の線画は、どちらも人間が手で描いています。
動きのポイントとなる原画は人間が描いて、動画はソフトが作ってくれるものもあります。
ただ、初期コストがかかること、活用に今までと違ったコツが必要なこと、大勢のスタッフやスタジオを介する制作全体に取り入れるのが難しいこともあり、業界全体には広がっていない印象です。
CGで作るのは基本は彩色以降とエフェクト
TVや映画などの商業アニメは、色をつけて光などのエフェクトを載せる工程はパソコンを使ったCGで作業されています。
3DCGで作られたアニメなど例外もあります。
TVアニメが作られる基本工程
【企画】
漫画や小説原作でアニメにするか完全オリジナルにするか等
制作会社やスポンサーやテレビ局が話し合って作品の枠組みを決めます
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【脚本】
物語の進行、状況、台詞などを脚本家が執筆
限られた時間内にどれだけ物語を入れるか調整もされている
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【設定制作】
キャラクターやアイテム、世界、場所など設定を作る工程
作品の大事なイメージが決まっていきます
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【絵コンテ】
脚本を元に1カット毎に動くものや台詞、音、カメラワークなどを設計
監督、演出家が担当し、以下の工程にも大きく影響します
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【レイアウト】
絵コンテを元に場面や配置の詳細を作画し決定していく
主に原画マンと作画監督が作画します
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【原画】
絵コンテとレイアウトを参考に動きのポイントとなる絵を制作
タイムシートで枚数や止めるタイミングの指定もします
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【動画】
原画が指示した通りに動きの絵を枚数分作成
動きのポイントである原画はニュアンスを崩さずにトレースします
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【背景美術】
レイアウトと設定のイメージボードを元に
アニメに必要な背景を専門の美術スタッフが制作
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▼ ここからパソコン作業 ▼
(これ以前にパソコンを使う場合もアリ)
【彩色仕上げ】
彩色担当が出来上がった大量の動画を
パソコンに取り込んで色指定通りに色をつけていきます
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【特殊効果】
煙や発光などのエフェクトを制作
CG専門の部署が作成していきます
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【撮影】
彩色された動画、背景、特殊効果を合成
空気感を統一するため微細な効果レイヤーが重ねられます
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【編集】
バラバラの場面を順番に繋いで1本の映像に
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【アフレコ】
声優がアニメ映像と台本を元に声を吹き込む工程
逼迫したスケジュールでは色の無い仮映像が使用される
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【音響制作】
BGMや効果音を専門の部署が制作
必要なタイミングに合わせて音素材を合成する
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【ダビング】
声と音素材を編集されたアニメ映像に合成し放映できる状態に
完成した映像は関係者が放映前に配布されることもあります
主にパソコンで作業されるのは彩色仕上げ以降になります。
(企画・脚本や背景でも使いそうですが・・・)
昔はセルと呼ばれる透明な用紙に専用絵の具で色を塗ってアニメが作られていました。
今は1枚1枚塗る大変さはありますが、パソコンでワンクリックで塗れるため筆で塗るより断然効率がアップ。
色も特殊効果も綺麗に見栄えする仕上がりになっています。
ペンタブは使う?…おそらく大半は鉛筆描き
設定制作、絵コンテ、レイアウト、原画、動画・・・といった描く工程では、ひとつひとつ担当するクリエイターが描いていきます。
ひとつ描いたら全部勝手に動いてくれる・・・という魔法のような事はありません。
(最近それに近いソフトは海外で色々と開発されています)
描く工程の時に、昔から鉛筆で紙に描くのが主流ですが、パソコンとペンタブと描画ソフトで描くスタジオも増えてきています。
アニメの仕事は工程ごとにスタジオが違う場合が多々あります。
連携しているスタジオのうち1箇所だけがパソコンを使う・・・とは、なかなかいきません。
長年鉛筆で洗練されたクリエイターがペンタブに切り替えるのも大変ですよね。
そんな状況なので、鉛筆でアナログ手描きの所もまだまだ多いです。
自社で全部やるようなスタジオや新しいスタジオでペンタブ作画を導入している所もあります。
保管や効率を考えるとデジタルの流れはアニメ制作にも増えているので、鉛筆主流とはいえ将来を考えるとペンタブで描くことも出来たほうが良さそうです。
3Dを一部もしくはフルで使ったアニメ作品も多数存在
どこまでアナログでどこからデジタルなのかを紹介しましたが、それを覆すのが3Dアニメーション。
全編が3Dで作られる作品も増えていますし、無機物や複雑なパーツだけ部分的に3Dを使用する場合もたくさんあります。
3Dは手描き作画とは全く異なる手法になるので、専門の会社や部署に任されます。
大勢の人が作るのにキャラが似ている理由
90年代くらいまではキャラクターの画風にかなりばらつきがありました。
最近ではそれぞれ別の人が描いたとは思えないくらい、キャラの印象が変わる事は少なくなりました。
多くの工程を経て大勢の人が関わって作られているのに、まるで1人が描いたように作画がブレない理由は以下のような工夫がされています。
作画監督の高度なスキル
原画・動画はすべて作画監督がチェック修正を指示しています。
作画監督は1話につき1人〜数人なので、キャラクターの統一感も調整されていきます。
キャラクターデザイン表の効果
全ての作画工程で参考にするのが、キャラクター設定表。
これは漫画などの原作があるアニメでもアニメ用に描きおこされ、動かしやすいよう似せやすいよう設計されています。
キャラ似せた絵を描きたい時、ためしにアニメの設定見ながら描いてみてください。
私は描きやすさが全然違うと感じています。
キャラさえ描ければよい? → 背景やエフェクトなどを描く能力も必要
作画の「レイアウト」という工程でパースに沿った背景を描きます。
背景が動く場合もあるので、原画マン動画マンでもキャラクター以外を描く機会は当然出てきます。
それ以外にも、CGを使うほどではない煙や爆発、メカや動物なども描きます。
アニメの作画では、キャラクター以外を描く機会も多いですし、キャラクターがどこに立っているか空間を意識した絵が必要になります。
作画ひとつとっても様々な技術が詰まって、アニメーションは作られています。
色々なものを描く機会はありますが「メカが得意」「料理作画なら」「動物動かすの好き」など特化していると専門として任されることもあります。
CGが請け負った分、よりキャラクター演出に注げる
煙や発光、複雑なメカや動き回ると大変な自転車や飛行機など、昔はすべて手描きだったのが、CGの発展で効率良く美麗にアニメーションが作られるようになりました。
CGが請け負った分、作画側は楽になったワケではなく、キャラクターがより魅力的に見えるよう技術や作画量が増しています。
その結果アニメがすごく綺麗になり、制作側を知らない視聴者が「全部CGなのでは?」と思えるまでになっています。