仕事でアニメ風イラストを一般企業やデザイン会社、企画会社などに提供しています。
元々アニメーター経験がありデジタル画像制作もデザイン仕事で長くやっていました。
アニメとか2次元が好きなのもあって、アニメテイストのイラストで人に伝えるチカラになればと現在この仕事をしています。
アニメをライトに楽しむ層が増えている事と、柔らかい参入しやすい印象を受ける事もあり、企業からの需要も昔に比べて随分増えてきました。
アニメ風イラストの描き方は色々あると思いますが、私が制作するときに気をつけていること考えていることをまとめてみました。
趣味で描く場合と、仕事でクライアントと一緒に制作していく場合の違いも感じていただけたらと思います。
使用しているソフトやツール
CLIP STUDIO PAINT EXを活用しています。
アニメも制作できるのと仕事で全機能活用したくて上位のEXを使っています。イラストを描くだけならPROで充分です。
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昔はSAIを使ってましたが、バージョンアップを繰り返したCLIP STUDIO PAINTはカスタマイズすることでめちゃめちゃ使いやすくなったので、手放せないツールになっています。
主に使用しているペンは、ラフや線画用にミリペンとサインペン、塗りの補助にGペンなどを使用しています。
塗りの際は塗りつぶしバケツツールに加えて、投げなわ塗りツールが重宝しています。
個人的に描画に使いやすいポイントはこちらにまとめています
タブレットはWacomのIntuosシリーズを愛用。
現在は古いIntuos4を使っていますが、そろそろ新しいIntuos Proに買い換えようかと考えています。ノートPCでも気軽に描けるようワイヤレスにしたい。
液晶タブレットが買いやすい値段になってきていますが、私はこういう↑板タブで描くほうが10年くらい慣れてしまっているので早く丁寧に描けます。
クライアントの要望から提案できる事を考える
今回は本当に仕事で制作させていただいている株式会社WORKALL様のイラストを例にします。ブログ掲載にも快諾いただきました。
仕事の場合、クライアントから要望が来ます。私の場合はメール文章で伺います。
今回は「普段から使っている3キャラ、若い方向けに仕事の手軽さ楽しさを伝える事」が前提で、「時代劇風に駕籠屋で移動しているところを飛脚が追い抜かすイメージ」「男性は侍姿が良いけど駕籠屋と飛脚は侍じゃないから悩むところ」と伺いました。
これは割と細かめに指示をいただいているほうです。
初めてご依頼の場合は「何のために、誰向けに、どういった雰囲気のものが欲しい」といった感じに目的もお聞きした上で、その目的に沿っている内容かどうかを考えラフ提案を考えます。
今回は飛脚が追い抜かす感じをメインに
イラストは一瞬しか見ないと思うのでゴチャゴチャしないよう
侍が飛脚バイトをするイメージで、侍に統一することを提案します
ラフを制作しクライアントへ提出
クライアントの要望+自分の中で方向性が決まったらラフを制作します。
大ラフ→カラーラフまで作って提出
大ラフは自分用に配置を考えるために作成しています。
大ラフをクライアントに見せても迷わせてしまうので、カラーラフに仕上げて確認してもらうようにしています。
侍が飛脚をしているのを1番目立つ様子と
駕籠屋のモブが目立たないように一色にした印象を
確認することができますね
色のありなしで印象が随分変わる
イラストレーター同士だと色が無くてもイメージできるかもしれませんが、クライアントはイラストレーターではないため、仕上げがイメージしやすいよう色を付けたラフを提出しています。
あまり清書に近すぎても、要望を言いにくくなってしまうのである程度で出すようにもしています。
文字が入る予定あればラフで入れる
↑白い部分に文字が入る予定。
文字が入る部分を事前に入れておくことで、イラストが隠れる部分、全体のバランスを確認できます。
文面が決まっていたらラフ時点で入れてしまいます。
文字数でイラストが隠れる領域も変わってくるので、清書前に確認したいところです。制作工程にデザイナーさんが入る場合は、ベストな配置を考えてくださるデザイナーさんにおまかせします。
迷ったら別案を提案
この事例でも別案を2つ提案しています。この2つはクライアントと相談してボツになった案。
空が大きく見えて爽やかだけど、街並みが見えないため世界観が伝わりづらい案。
もうひとつは試しに大きくカメラワーク変えてみた案。
面白い画にはなるものの、全面地面になって狭い印象が強くなってしまうのでボツになりました。
ラフ提出時には制作時のポイントも説明する
上記のようにラフ案を見せながら、案別に伝わるメリット・デメリットも説明しています。
イラストをパッと見ただけではOKかどうか悩みそうな場合に、こういった情報も判断材料にしてもらえたらと思い伝えるようにしています。
忙しいクライアントの負担にならないよう、長文にせずポイントにまとめて、自分のイチオシもあれば伝えています。
線画の時に気をつけていること
ラフがOK出たら清書を制作します。まずは線画を作成。
必ず資料見る
想像で描くと絶対間違いが起こるので、建物も服装もポーズもできるだけ調べるようにしています。
クライアントから資料をいただくこともあります。
線画ラフでパースや配置を微調整
ラフのまま描いてしまうと綺麗にはならないので、線画用ラフを作成します。
キャラと背景別々にしていますが、もちろん合成した形も見ながら調整していきます。
小物や背景など確認したい点がある場合は、この線画ラフの状態でクライアントに確認していただく事もあります。
キャラクターはつなぎ目の見えないシャープなライン
私のイラストは、線のつなぎ目がわからないシャープなラインが、清潔感も出て特徴的になっています。
デジタルで描いているので、つなぎ目気にせず描いてる方も多いのですが・・・
私は元アニメーターというのと、AdobeIllustratorでも作画ができること、若干神経質な性格も災いして、このスタイルで仕事をしています。
アニメ同様の微細な強弱のある線での表現になっています。
背景は色線や塗りで描く
キャラクターをグッと目立たせたいのと、背景は自然に馴染んで欲しいので、背景イラストは色線で線画を描き、塗りだけで済ます部分もあります。
↑画像は軽く影だけ入れた下塗り状態の時と、ブラシ等で仕上げた時のイラストです。
塗りで気をつけていること
線画が出来たら塗りに入ります。
目立つ色と紛れる色を意識的に配置
彩度の高いような、目立つ色は入れすぎるとギラギラと見辛くなってしまうので、バランス良いかどうか考えて配色します。
今回は空や背景で青色を多様しているので
駕籠屋の人を目立たせたくないため、青色をチョイスしています
ほんの少しグラデーションをつける
アニメ風イラストなので、基本はベタ塗りになりますが、単調でつまらない印象になるので、煩く無い程度にグラデーションを入れています。
最近のアニメでものっぺりしたベタ塗りの絵はほぼ無いはずなので、これくらいのグラデーションはあったほうが見栄えすると思います。
影も形はクッキリさせていますが、濃淡かかっています。
柔らかい素材、硬い素材など質感表現をつける
同じようなアニメ塗りでも質感によって変えています。
着物部分は髪の毛同様のグラデーションで柔らかさを、刀はハッキリした濃淡と目立つハイライトで硬さを表しています。
背景は色の濃さや明るさでも距離を表現する
↑背景の奥の方です。
一番遠い建物と手前の建物で、色の濃さを変えています。こうやってパース以外にも、色で距離感を表現することができます。
作業効率化のためにやっていること
1枚のイラストを色々な手間をかけて制作していますが、仕事なので締切もあり、できるだけ効率良く作業したいものです。効率化することで、注力するべき所に時間をかけることもできます。
普段作業時間の短縮にやっていることをまとめました。
ショートカットやデバイスなど使う道具のカスタマイズ
CLIP STUDIO PAINTのショートカットも自分用にカスタマイズして使っています。
基本のコピペ等は当然ですが、個人的によく使うブラシなどのツールやレイヤー作成などもショートカットに入れています。
さらに片手デバイスも導入。
キーボードに慣れておくと会社など他所の環境でも制作できるメリットはありますが、個人事業なので自分のマシンしか使いません。
長時間作業にキーボードは結構疲れるので、片手デバイスを活用しています。
案が出ない時など迷った時は他の行動をする
最初のラフ出しの際になかなか案が決まらない事もあります。
迷走したまま描いてみても良いアイデアは出てきません。これまで色んな仕事をしていて、これで良い案が出てきたためしがありません(汗)
気分転換に散歩したり家事をしたり、今みたいにブログ書いたり、一旦別の行動をして閃くことのほうが多いです。
不安で切羽詰まったりしてもロクな案が出ないので
早すぎる納期とかも危ないですね(汗)
隠れる部分は作画を省略する
今回の場合は、建物が複雑なのもあってキャラに被る背景は省略しています。
ついつい楽しくなって描き込んでしまうのですが、これだけで随分作業短縮になります。
素材の活用
今回は着物の柄と花びらに素材を活用しています。
素材によっては仕事に使えない(商用不可)条件もあるので確認が必要です。使える素材をストックしておきたいですね・・・
そのまま使うと素材感が出て浮いてしまうので、配色などで馴染むように工夫します。
クライアントの表現したい事を叶えるために
こんな感じで制作していき、さらに光や空気感を出すレイヤー効果などを付けて仕上げていきます。
クライアントの目的を叶えるために、趣味で描くのとはちょっと違った工夫もしながら一枚一枚作成しています。これ以外にもクオリティアップのためにできる事はあると思うので、今後も精進しつつクライアントもユーザーも満足する仕事を目指していきます。